こんにちは!ふくみっとの中の人です!
「コラム紹介」とは!私が出会ったコラムの中で、介護職に携わる皆さまにぜひお伝えしたい名コラムを紹介するコーナーです!
このコラムは、福祉人材の育成に尽力されているノートルダム女子大学教授の「三好 明夫」先生が、2004年頃に愛媛新聞に寄稿されていた、『介護人への12章』です。
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私が生活相談員として勤務していた施設には「入居者自治会」があり、すべての入居者が加入することを前提に会費と会則が設定されていました。
自治会に役員会があり、毎月1回、入居者から選ばれた役員6人が今月の行事や出来事の反省、次月の行事の提案、生活全般についての意見を交換する会として根付いていました。
司会進行は会長または副会長です。その役員会で「夜間入浴」の問題が提起されました。
当時は職員の勤務の都合に合わせ昼間の入浴になっており、夏場でも1人週2回が原則でした。
役員の中から遠慮ぎみに「夏場の暑い時だけでええから寝る前にシャワーだけでも浴びて汗を流したい」という声がでました。
「ぜいたくなことを言うたらいかん。職員さんも忙しいんじゃ」という意見もありましたが、
最終的には夜間入浴を実施してほしいということでまとまりました。
自治会役員会で審議され了承されたものは職員主任会議に提案されて決定すると、職員会議で全職員に周知され、毎月1日に実施していた全入居者が参加する懇談会で発表されていました。
こうして、夏場の3ヵ月間、本人が希望すれば毎日でも入浴できるようになりました。
自治会の活発な活動によって次々と高齢者の希望に沿った企画が実現しました。
「夜の居酒屋に出かけての一杯会」では若者が飲み合う横に車椅子(いす)軍団が入り込みました。
何度か行くうちに、それまで隣で無視していた若者たちが入り口の段差で車椅子介助を申し出てくれました。
「県外への一泊旅行」は県内で自信のついた高齢者の希望が高まって四国制覇の後に九州、中国へとつながっていきます。
「死ぬまでには来たいと思っていたんじゃけどもうこの体では無理じゃとあきらめていた」と語ったYさん。
脳梗塞(こうそく)の後遺症で固まった左手を支えながら、香川・善通寺の本堂でいつまでも念仏を唱えていました。
「温泉旅館に出かけての忘年会」では車椅子とベッドの生活ばかりだったOさんが、座椅子に腰を降ろして、「熱燗(かん)をコップでおくれや。畳の感じを忘れるところやった。私らはやっぱり日本人やわい」と元気いっぱいな笑顔で乾杯の音頭をとってくれました。
銭湯に出掛けての入浴や出前なども人気でした。
施設の生活主体はあくまで高齢者です。
自治会のない施設は人権意識が欠如しているとも言えます。会則や会費のない自治会もいただけません。
寝たきりや痴ほうの高齢者に何がわかるかという発想なのでしょうか。
要介護で依存状態になっていたとしても、意欲も主体性もない存在ではありません。
個の尊厳、主体性の尊重などがしっかりと守られていくためにも自治会組織は必要なのではないかと思うのです。
施設の主人公が我慢したりあきらめたりすることのない生活の場所づくりが求められています。
三好 明夫
ノートルダム女子大学 社会福祉学 教授
https://notredame-db.net/detail.php?id=65
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