こんにちは!ふくみっとの中の人です!
「コラム紹介」とは!私が出会ったコラムの中で、介護職に携わる皆さまにぜひお伝えしたい名コラムを紹介するコーナーです!
このコラムは、福祉人材の育成に尽力されているノートルダム女子大学教授の「三好 明夫」先生が、2004年頃に愛媛新聞に寄稿されていた、『介護人への12章』です。
三好先生のご紹介はこちら
人が新たに生活していく場所や環境は、それまでの生活歴が大きく影響します。
誰しも、さまざまな生活パターンがあり、どのように過ごしたいかという生活の希望があるはずです。
近年は介護サービスの選択肢を増やして提供することが重要であるといわれていますが、いくら豊富な選択肢があったとしても、内容や利用方法を理解していなければ、選択の自由が確保されているとは言い難いと思います。
施設で長期間にわたって同一の介護を提供されていた場合、利用者が慣れて依存的に生活してしまうことや、「施設生活とはこうあるべき」という方向性を職員側で決めて指導や指示が横行してしまうことがあります。
いわゆる「施設病」です。
「施設だから仕方ない」とするあきらめの姿勢から施設病が生まれます。
職員にまん延した施設病は利用者にも感染していくことになります。
この悪循環を断ち切るには、「利用者は弱者だから主体的に生きていくことはできない」とする考えを見直さなければなりません。
「施設の社会化」ということが叫ばれています。
施設を特殊な場所とせず、すべての地域住民にとって開かれた社会資源のひとつとなることが求められています。
施設の行事に地域住民が参加したり利用者が地域の行事に参加したりすることで、
施設の持つ専門的な人的、物的機能を地域に還元するということも社会化のひとつでしょう。
最も重要なことは、社会の一般常識が施設で通用しているか、施設の常識が社会の非常識になっていないか―非常識になっていたとしたら、施設でしか通用しない常識を解体して社会の常識が通用するようにしなければならないことではないでしょうか。
利用者の訴えに、職員から「ちょっと待ってください」という言葉が発せられることがあります。
呼び止められた場面で他の用務を行っており、その用務との優先を考えた場合に、後回しにしてもよいと判断することもあるでしょう。
ですが、職員にとっては後回しと思ったことでも、 身体機能の低下した利用者には切実なことかもしれません。
特に問題なのは、「ちょっと待って」と言っておきながら忘れてしまって対応をしないということです。
利用者は「まだか、まだか」と数日間待ち続けることになります。
援助は利用者の希望に合致したものであるべきです。
あくまでも利用者主体の援助であるという意識を持ち、利用者の言葉の重みや意味をしっかりと受け止めて聞き入れることです。
むろん言葉だけではなく表情や行動からも読み取る必要があります。
「ちょっと待って」という 言葉ひとつ取り上げても、施設だけの常識がまかり通っていないか、さまざまな角度から検討してみてはどうでしょうか。
三好 明夫
ノートルダム女子大学 社会福祉学 教授
https://notredame-db.net/detail.php?id=65