こんにちは!ふくみっとの中の人です!
「コラム紹介」とは!私が出会ったコラムの中で、介護職に携わる皆さまにぜひお伝えしたい名コラムを紹介するコーナーです!
このコラムは、福祉人材の育成に尽力されているノートルダム女子大学教授の「三好 明夫」先生が、2004年頃に愛媛新聞に寄稿されていた、『介護人への12章』です。
三好先生のご紹介はこちら
ユニットケアは、大規模化している介護老人福祉施設をユニット(単位) 化することで少人数のグループにして、家庭で生活しているようなゆったりしたケアを提供しようという試みです。
ここ数年でユニットケアを取り入れる施設も多くなりました。
各ユニットには居室、談話スペース、食堂を設置して、少人数で買い物や散歩をすることや、
調理・配ぜんも高齢者と職員が一緒に行い、食事をするということを目標としています。
たとえ、重い介護状態になったとしても普通の家庭生活が送れるような援助を行うことが目的でもあると言われています。
人が人として生きるための大原則は「個別性の重視」「主体性の尊重」「自己決定」ではないでしょうか。
ところが、施設の場合には自己決定や自己主張ができにくい状態の人が少なくありません。
介護も機械的な流れ作業で終わってしまったり、一律のレクリエーションを施設全体で行ってしまったりすることもあります。
建物構造も施設と家庭ではあまりにも違いがあります。
高齢者にとって安心と満足の生活の実現のためには小規模、少人数化は必要であると思います。
約十年前、ユニットケアという言葉もなかった当時、部屋番号数字を花と木の名前の居室名に変更し、東棟と西棟をブロックにして分けたことがありました。
十分に職員間で話し合いをもって、入居高齢者の理解も得ていたはずでしたが、一週間が経過したときに自治会の会長、副会長がそろってやってきました。
「東棟と西棟に職員が分かれて張り付いたら細かいところまで対応してくれるというたが、さっぱりじゃわい。」
「東に人がおらんので西までお願いにいったら、西の担当は西で集中しているから東まではいけませんと言われてな。これじゃ無責任なままじゃ。」
「自治会の意見として元に戻してほしいと思います」
と怒りの表情で言われました。
施設を半分に分割することで小規模化を行って、高齢者のニーズをしっかりとくみ取って援助に結びつけ、ゆとりの介護を実現させたいという思いでしたが、結果として無責任なままに終わってしまいました。
ユニットケアはややもするとハードの部分が強調されます。
職員の意識の中に十分な「家庭的な雰囲気づくり」が欠けていたのかもしれません。
生活環境の構造整備には、高齢者の声を聴き取って共につくり上げていく視点が必要です。
職員は毎日の決まった日課業務を続けていますが、高齢者は普通の生活を続けているのです。
機械的な身体介護中心の業務から日常の全体性を見る生活援助への移行が不可欠です。
ユニット内で判断したり決定することも多くなってくるだけに密室性も高くなります。
実施の理念を理解した高い専門性を身につけた職員の配置が必要となります。
「愛媛新聞2004年(平成16年)6月1日掲載」
三好 明夫
ノートルダム女子大学 社会福祉学 教授
https://notredame-db.net/detail.php?id=65