こんにちは!ふくみっとの中の人です!
「コラム紹介」とは!私が出会ったコラムの中で、介護職に携わる皆さまにぜひお伝えしたい名コラムを紹介するコーナーです!
このコラムは、福祉人材の育成に尽力されているノートルダム女子大学教授の「三好 明夫」先生が、2004年頃に愛媛新聞に寄稿されていた、『介護人への12章』です。
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介護保険制度の登場で、介護サービスを契約によって利用することになりました。
お互いの義務と権利の関係が明確となり、高齢者の安全や安心を確保することが不可欠であるという視点から、事故防止策として危機管理対応の必要性が生じました。これがリスクマネジメントです。
事故防止策として高齢者を抑制したり身体拘束してしまうことがあります。
厚労省令の運営基準には「緊急やむを得ない場合を除き、身体拘束を行ってはならない」とありますが、拘束をせずに自由に歩かせていて骨折し、施設の責任となって訴訟でも起こされては困るというのが施設側の言い分です。
事前の安全策ととらえ、これを緊急な場合として拘束されてしまってはたまったものではありません。
また、身動きできない状態となることで寝たきりや痴ほうの進行が速まることは多くの人たちが理解しているはずです。
同運営基準には「懇切丁寧を旨とし、処遇上必要な事項を入所者またはその家族に理解しやすいように説明する」「常に質の評価を行い、その改善を図らなければならない」ともあります。
緊急やむを得ない場合には高齢者とその家族にきちんと説明を行って理解を得るとともに、危機管理のシステムが、あくまでも高齢者のサービスを向上させるためのものかということを、内輪の論理ではなく外部評価によって見定めてもらうことも必要ではないかと思います。
ある施設を訪問した時に施設長は自慢げにこう言いました。
「どうですか、皆さん静かに寝ているでしょう。自宅では介護できない重い状態の老人が生活するのですから、歩きまわっていたり外出や園外行事に参加していたらどう思われるか。
専門の介護職員が24時間いるのですからじっとこうしていることが1番安全なんですよ」と。福祉現場は逆行しているのでしょうか。
生活援助者として、リスクが高い高齢者であっても、本人の希望をどう実現していくのかということを忘れてはなりません。
K子さん78歳は、体力が低下して流動食となっていました。
そんな体調の中、K子さんは車で2時間以上離れたふるさとのお墓参りを涙をいっぱいにためて希望したのです。
私たちは主治医の助言を得ながら相談員、看護師、介護職員で送迎を行うことにしました。
道中の緊急時の対応を事前に確認しておくとともに、家族に現地での受け入れを要請しました。
K子さんは亡き両親の墓前で手を合わせながら、これほどの体力が残っているのかと思うほど力強く般若心経を唱えていました。
危機管理の先にあるものは、高齢者の満足を高めてサービスの質を向上させ、高齢者自身が必要としているサービスを十分に提供していくという視点と実践が不可欠です。
三好 明夫
ノートルダム女子大学 社会福祉学 教授
https://notredame-db.net/detail.php?id=65
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