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「コラム紹介」とは!私が出会ったコラムの中で、介護職に携わる皆さまにぜひお伝えしたい名コラムを紹介するコーナーです!
このコラムは、福祉人材の育成に尽力されているノートルダム女子大学教授の「三好 明夫」先生が、2004年頃に愛媛新聞に寄稿されていた、『介護人への12章』です。
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大阪市内のある特別養護老人ホームの報告では1年間に45件の介護事故がありました。
事故の種類は、転倒34件、打撲・腫れ8件、誤飲1件、施設外抜け出し1件、水漏れ1件で、転倒が全体の75%を占めています。
転倒事故の内訳は「歩行能力衰え・体調不良」が17件、「車いすの移乗・移動・ずり落ち」12件、「ワックスがけ」2件、「介護ミス」2件、「ベッドからの転倒」1件となっており、歩行中や車いす操作中の事故が多発しているようでした。
安全であるはずの施設で転倒により骨折し、寝たきりになってしまっては大問題です。
ワックスがけ後の対応や介護ミスなど、施設側に十分な事故防止策があれば避けられたのではないかと思われる事故もあります。
ですが、こうした指摘により、施設側が必要以上に萎縮してしまっていることがあります。
ある施設では、事故の多い施設という風評には耐えられないと、事故防止、安全確保を急ぐあまり、居室への閉じ込めや車いすでの抑制、ベッド柵(さく)による身体的拘束を続けていました。
しかし、これでは高齢者の人権はどうなってしまうのでしょうか。
車いすの高齢者の胴に巻くベルトは安全ベルトと言われますが、包装紙には「抑制ベルト」と書かれています。手首や足首用の小型ベルトも登場しています。
安全ベルトをゼロにしたと豪語する施設を訪問すると、車いすの高齢者を食事用テーブルに押し込んでいました。確かにベルトはしていませんが、体はテーブルに挟まれていて動けませんから、やはり拘束ではないかと思いました。
介護保険の運営基準に「緊急やむを得ない場合を除き、身体拘束を行ってはならない」という一文がありますが、「緊急やむを得ない場合」をどのように判断して高齢者や家族に理解や同意を求めていくのか、十分に検討されなければなりません。
病院で安静が必要だったS子さんは退院後、床ずれ予防のため車いすでの生活になりました。
歩行が不安定だったにもかかわらず車いすから離れて歩こうとするのでベルトを着用してもらいました。
それでもS子さんは歩こうとして車いすを亀の甲羅のように背負い、足を踏み出していたことがありました。
歩きたい一心の行動だったのでしょう。
「寝たきり」を防ぐとして「座らせきり」にさせてしまっていたことを私たちに実力行使で知らせようとしたのかもしれません。
S子さんにはその後、居室内を畳に改良した部屋に移ってもらい自由に歩けるようにしました。廊下やホールに出るときは職員がマンツーマンで付き添いました。
事故をゼロにするのは難しいかもしれませんが、人権尊重と身体拘束の禁止という価値判断を施設職員で共有し実践していくことが求められています。
三好 明夫
ノートルダム女子大学 社会福祉学 教授
https://notredame-db.net/detail.php?id=65
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