こんにちは!ふくみっとの中の人です!
「コラム紹介」とは!私が出会ったコラムの中で、介護職に携わる皆さまにぜひお伝えしたい名コラムを紹介するコーナーです!
このコラムは、福祉人材の育成に尽力されているノートルダム女子大学教授の「三好 明夫」先生が、2004年頃に愛媛新聞に寄稿されていた、『介護人への12章』です。
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飽食の時代、グルメブームなどと言われているようですが、これは一部のグルメファンや若者だけのものではありません。
介護を必要とする高齢者にも、当たり前に「パスタやピザを食べたい」などの希望があります。これは決して特別なことではありませんし、お店では「高齢者お断り」や「車いす、歩行器の方はご遠慮ください」という看板も見たことはありません。
特別養護老人ホームでの勤務時代に、食事についてのアンケートを栄養士とともに実施したことがありましたが、生活の中の一番の楽しみは「食べること」でした。
高齢者の強い希望もあって、栄養士は毎月「外食の日」と「出前の日」を設けました。
一般家庭でも月に一度程度は外食もするでしょうし、同じレシピで作ってもレストランと全く同じ味にはなりません。
何より雰囲気を味わいたいというものです。
介護保険制度が導入され、施設では効率の優先が叫ばれ、介護職員の目の回るような忙しさの中、限られた時間帯で食事介助の能率アップが目指されています。
学生が名付けた「ツバメのえさやり」もそれです。
扇状のテーブルで、一人の職員が複数の高齢者の食事介助を一度にしている風景は、まるでツバメのえさやりだというのです。
職員は「食べないと体が弱ってしまうの。
あなたのためよ」と言って慌しく詰め込んでいます。
たしかに時間がかかりすぎると、咀嚼(そしゃく)力の低下があれば疲れてしまったり眠ってしまうこともあるでしょう。
しかし介助に必要なのは「食べさせる創意工夫」ではなく「食べていただく創意工夫」の視点だと思うのです。
さらには「ネコまんま」や「混ぜご飯」と言われる介助も大手を振っています。
おかずを細かく刻んだものやペースト状のものをおかゆに混ぜ込んでしまうというものです。
揚げ句には最後のおかゆに薬を混ぜている場合もあります。
「食事の楽しみより命が大切だ」と福祉専門職の人たちは開き直るのでしょうか。
各地の施設内研修でお話させていただく時に職員から「お年寄りが混ぜご飯を希望している。
自己決定の尊重である」と言われることがあります。
何を食べているのか分からないような食べ方を続けることが尊重なのでしょうか。
ひとつひとつの豊かな食材の味が生かされる介助を目指すことこそが尊重ではないのでしょうか。
スプーンも持てなくなったことで食事の全面介助を受けていた脳梗塞(こうそく)後遺症のT子さんが、ある日、隣の方のおかずを手につまんでゆっくりと口に運んでいました。
他人の介助より、どれほど時間がかかっても自力で食べられることは素晴らしいことです。
翌日、おかゆから一口サイズの小さなおにぎりに変更になりました。
T子さんの食欲がみるみる強まっていったことはいうまでもありません。
三好 明夫
ノートルダム女子大学 社会福祉学 教授
https://notredame-db.net/detail.php?id=65
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