こんにちは!ふくみっとの中の人です!
「コラム紹介」とは!私が出会ったコラムの中で、介護職に携わる皆さまにぜひお伝えしたい名コラムを紹介するコーナーです!
このコラムは、福祉人材の育成に尽力されているノートルダム女子大学教授の「三好 明夫」先生が、2004年頃に愛媛新聞に寄稿されていた、『介護人への12章』です。
三好先生のご紹介はこちら
施設職員として勤務していた時、「特別養護老人ホームには、特別養護老人ホーム独特のにおいがあるように思います」という実習学生からの言葉が印象に残っています。
このことは、建物に充満している排せつ物と消毒液のにおいが混ざって汚臭になっている、ということで語られたのではありません。
新鮮で純粋な学生たちが見たものは、在宅の生活、つまり人間らしい生活とは程遠い、管理と指導に満ちた違和感の「におい」だったのです。
施設か在宅かの二者択一の選択肢しかない状況にあって、在宅介護が限界となったとき、家族は無条件で施設介護を受け入れなければならないことについての問題提起でした。
「生きる」というよりも「生かされているだけ」とも語り、涙した学生たちは現在、どんなすてきな援助者として活躍しているのでしょうか。
私は「介護の質は介護職員の質によって決まる」と考えてきました。
また、ある人は「その施設の職員を見れば、施設の高齢者の様子が分かる。
高齢者の様子を見れば、職員の様子が分かる」と言っています。
介護を受けなければ生きられない高齢者は、妥当な意見があっても、職員の機嫌を損ねると介護が乱暴になることを知っています。
「何か困ったことはないですか」と尋ねられたら、
「ありがとうございます。おかげさまで楽しく暮らしております」と笑顔になって、合掌までしています。
家族もなかなか本音で意見を言うことはできません。
ボランティアが意見を出しても「実態を詳しく知らない人が知ったように言わないで」とあしらわれてしまいます。
こうした中で、施設の実態を、最も正確に判断して是非を問うことができるのは施設職員ではないでしょうか。
しかし、職員にとっては最も過酷な「踏み絵」があります。人権侵害を是正しようと思えば、手抜き介護を続けておきたいと思っている大勢の職員から、猛烈な反発と嫌がらせの実力行使を受けるからです。
孤立化を覚悟するだけでなく、自身の退職を決意して臨まなければなりません。
むろん、職員たちばかりを責めることはできません。
施設の経営者からは「福祉現場はボランティア精神だから」とボランティアの強要もあります。
低待遇で脇目も振らずに働かされて疲れ切ってしまった職員に、精神的余裕などあるはずがありません。
それでも人権擁護の姿勢で提言したにもかかわらず、介護の体制や姿勢は全く変わらないということは少なくありません。
高齢者から慕われ信頼され、ともに歩んできた職員が、いつの時代も介護の現場を去らなければならない実態に、胸を突かれます。
職員の苦悩はどこの誰が解消してくれるのでしょうか。
「施設は人なり」ーー質の高いケアやサービスを実施するには、職員たちを救う援助が不可欠です。
三好 明夫
ノートルダム女子大学 社会福祉学 教授
https://notredame-db.net/detail.php?id=65
関連記事はこちら