こんにちは!ふくみっとの中の人です!
「コラム紹介」とは!私が出会ったコラムの中で、介護職に携わる皆さまにぜひお伝えしたい名コラムを紹介するコーナーです!
このコラムは、福祉人材の育成に尽力されているノートルダム女子大学教授の「三好 明夫」先生が、2004年頃に愛媛新聞に寄稿されていた、『介護人への12章』です。
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「君逝きて」の著者小倉ユキさん(仮名)は特別養護老人ホームでの入居実体験を著書で次のように語っています。
「あるおばあさんは歩かせてもらえなくなり、入れ歯も外されてしまう。
そのうえ、おもらしもしていないのに無理にオシメを当てられる。
鍵のかかった服を着せられて手や足をベッドにくくりつけているときもあった」
「食事時間は人数の多い少ないにかかわらず30分と決まっている。
無理に食べさせておじいさんが苦しくて吐こうとしているのに、まだ口の中に入れようとしていた。
お風呂も混浴だったので右にも左にもおじいさんに座られてびっくりして飛び出したおばあさんもいた。」
小倉さんが著書を出版したのはホームを退去してからでしたが、著書を読み、こうした事実があったのかという関係者の問い合わせに、施設側は「小倉さんはボケているので信用しないでほしい」と語ったそうです。
私が現場職員だった時代の職名は「生活指導員」でした。私は当時でも勝手に「生活援助員」と名乗っていました。
「生活指導員です」というと、
「入居高齢者の生活を指導する人ですよね」と大半の人が答えます。
生活指導とはもともと、知的障害者に基本的な日常生活習慣を身につけさせるための生活訓練から誕生したと言われています。
高齢者は終い(つい)のすみかとしてホームに住民票を移して入居してきたのに、生活習慣や生活訓練の指導漬けというイメージはいかがなものでしょうか。
高齢者は現在の豊かな日本を築いてくださった大先輩です。
指導と援助の違いとは何でしょうか。指導とは指導者と被指導者が上下関係となります。
指導者は「早く食べてください」とか「早く入ってください」とか、指示的な言葉になるでしょう。
一方的に話しかけることが多いので、指導者は能動的に、被指導者は受動的になり、本来意思疎通や信頼関係に必要なコミュニケーションは実現しません。
また、画一的、全体的な介護に終始してしまう危険があります。
援助では指示はしません。援助者と利用者が対等で、同じ高さの目線となるはずです。
「いつ食べられますか」「いつ入られますか」という依頼形の言葉になり、利用者の主体性が尊重されるとともに利用者の自己決定が促されることになります。
援助者も利用者も双方が能動的なコミュニケーションを実現することができます。
10人の高齢者がいれば10通りの、個別のニーズや希望に寄り添った介護が行えるでしょう。
さて、小倉さんが生活していたホームにも生活指導員がいたはずです。
ここでの生活指導は、高齢者の生活習慣の改善や生活訓練の強要で、寝たきりにさせたり身体拘束したり、早飯や混浴を善しとして行っていたのでしょうか。
老人ホームは誰のためのものなのか。介護保険制度で自己負担が増え契約となった今では、議論の余地もないはずです。
三好 明夫
ノートルダム女子大学 社会福祉学 教授
https://notredame-db.net/detail.php?id=65
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