こんにちは!ふくみっとの中の人です!
「コラム紹介」とは!私が出会ったコラムの中で、介護職に携わる皆さまにぜひお伝えしたい名コラムを紹介するコーナーです!
このコラムは、福祉人材の育成に尽力されているノートルダム女子大学教授の「三好 明夫」先生が、2004年頃に愛媛新聞に寄稿されていた、『介護人への12章』です。
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生活環境で最も大切なものは、部屋の環境ではないでしょうか。
今年4月から、新設される特別養護老人ホームは、全室個室で約8畳以上の面積を確保するとともに、夫婦2人部屋としても使用できるよう、室内にトイレを設置することが望ましいとされました。
これまでの4人部屋から、今後、一気に個室化が進むでしょう。
多様な住まい方があっていいわけですから、部屋もいくつかの選択肢から利用できることが望まれます。
個室だと寂しくて寝られないなど、不安になる高齢者もいるので、導入は好ましくないという意見もあります。
たしかにそういう面もあるでしょう。ですが生活歴の全く違う他人が同室になるのです。
「明るすぎる」「暗すぎる」「暑すぎる」「寒すぎる」など、照明や空調でも感じ方が違います。
排泄交換があればにおいや音も共有しなければなりませんし、テレビはイヤホンで聴かなければなりません。
また、家族との長時間面会や宿泊への配慮などを考えると、やはり原則個室であるべきです。
さて、家庭的な雰囲気づくりが必要と言われていますが、家庭的な環境があってこそ、そこに家庭的な雰囲気が生まれるものです。
従来型施設の多くは、部屋の狭さもあり、私物の持ち込みは制限されていて、ベッドと床頭台しか置いていないところもあります。
サイドに花が生けてあるのもあまり見たことがありません。
ベッドの頭には、名札や本人確認をさせるような写真まで張ってあったりして、ここは病院かと思うような施設もあります。
部屋の入り口が常時開放されている場面をよく見ますが、せめて暖簾(のれん)やカーテンがほしいものです。
室内は、たとえ4人部屋でも、カーテン以外で遮へいできないか検討してみてもいいでしょう。
施設は高齢者の生活の場なのです。テレビや収納庫、小型の冷蔵庫だってほしい。せめて仏壇を置いて祈りたいし線香も上げたい。
使い慣れた家具の持ち込みもしたい。
条件の厳しい部屋環境でも、高齢者個々の希望に向き合っていくことが大切です。
施設側の発想で非日常なレクリエーションやイベント中心になっていませんか。
改善策として、施設を小規模な人数単位とするユニットケアの導入もそのひとつです。
日常性を重視して、一緒に食材を買出しに行ったり、料理をしたり、囲碁や将棋などの趣味を堪能する場所をつくったりすることも必要です。
家族や友人知人も気軽に訪ねて交流できるスペースがあれば、さらによいと思います。
これらを実現するためには、職員の意識改革や環境づくりへの創意工夫が必要不可欠であることはいうまでもありません。
最新の建物や部屋にこそ質の高い介護サービスがあるということではないと思います。
三好 明夫
ノートルダム女子大学 社会福祉学 教授
https://notredame-db.net/detail.php?id=65
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