こんにちは!ふくみっとの中の人です!
「コラム紹介」とは!私が出会ったコラムの中で、介護職に携わる皆さまにぜひお伝えしたい名コラムを紹介するコーナーです!
このコラムは、福祉人材の育成に尽力されているノートルダム女子大学教授の「三好 明夫」先生が、2004年頃に愛媛新聞に寄稿されていた、『介護人への12章』です。
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「ここの老人ホームは良泉で知られる〇〇温泉を引き湯しており、自然に恵まれた環境の中にあります」ーー10年以上も前に私が勤務していた特別養護老人ホームのキャッチフレーズの一節です。
近年の温泉ブームや温泉療法に支えられることなく、その時代にも、泉質の良さにひかれて利用される高齢者は少なくありませんでした。
温泉入浴での一服は、今も昔も高齢者にとって心身の休養になっているようです。
今でこそ当たり前になった夜間入浴ですが、当時は昼間が主流でした。
中には、午前の早い時間に実施し、「施設でも朝風呂に入れるあなたたちは幸せ者よ」と言うとんでもない職員もいました。
温泉旅行に出かけて、朝の露天風呂に入るというのは、本人の意思によるものです。職員の勤務パターンに当てはめた入浴に、どんな幸せがあるというのでしょうか。
また、高齢者一人につき「週に2回以上の入浴」という最低基準がありますが、それが最高基準になってしまっている施設もあります。
入浴の希望日や時間帯、入浴時間を高齢者自身で決定できる施設はまだ少ないのも事実です。
お風呂と言えば夜間に入るのが一般的ですが、早朝でも昼間でも夕方でも、入浴時間が5分でも20分でも、個別の希望に対応する努力が必要です。
雑菌の問題が解決することを前提とすれば、毎日24時間体制の入浴を実現することが理想でしょう。
そもそもリラックスできるはずの入浴が、制限や制約の中で、芋の子を洗うような状態で進められてはいけません。
さらに、介護者の専門性ということを考えれば、「入浴拒否者」への適切な対応が求められています。
高齢者の長年の生活習慣と主体性の尊重という状況下で、「入りたくない」という訴えにどう対処するかということです。
「入らなければ不潔、皮膚疾患の誘発」として指導すると強制になり、自己決定だからと入れなければ、放任や放置になりかねません。
長年自宅で独り暮らしをしていたH男さんは、月に1回程度の入浴と下着の交換を続けてきたこともあって、施設でもなかなか入ろうとしません。
介護主任が入りたくない理由を確かめたところ、「入らなくても死なない」し、とにかく面倒くさいということでした。
次の日から、部屋の中を暖めて、湯を入れたバケツとタオルでの全身清拭(せいしき)を始めました。
週に2回、部屋での清拭が続いた2ヶ月後、H男さんは「やっぱり自分でぬくもれる風呂がええ。次から風呂に連れていってくれるか」と話してくれたのです。
「入ると気持ち良さそうにするのに、入ってもらうまでが大変」という施設側の声を聞きます。
高齢者自身に、お風呂に入る楽しみがなくなっているのかもしれません。
「早く入りなさい」「早く出なさい」ではそうかもしれません。
三好 明夫
ノートルダム女子大学 社会福祉学 教授
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